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胸糞映画……かと思いきや衝撃と感動の展開へ『悪い子バビー』ロルフ監督に聞く「キャラクターを“作る”という行為を自分に許していない」

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第50回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、その強烈で斬新な物語で全世界に衝撃と感動を与えた『悪い子バビー』が、新宿武蔵野館ほか全国順次上映中です。

一般社会とかけ離れた過酷な環境で育った男・バビーが、多くの人々との出会い、音楽に導かれて自分自身を発見する旅を描く『悪い子バビー』。ヴェネチア国際映画祭での審査員特別賞受賞をはじめ数々の映画祭で評価された、映画の常識を凌駕する世界的傑作。

公開から「想像できなかった展開に衝撃」との声があふれる本作の監督・脚本を務めたロルフ・デ・ヒーアさんにお話を描きました。

――本作大変素晴らしかったです。初の日本公開となりますね!

日本の方が映画館で観てくれるということが本当に嬉しいよ。この映画は悪びれずに映画館で観て欲しいという気持ちがもともとあって、撮影中もずっと「これは映画なのか?」というメモを掲げながら自問自答しながら作っていました。これは、映画館で体験してほしい作品なのです。

――映画のプレス資料での監督のコメント、「以前、母親に怒られた子供が“ママ!愛してる!愛しているよ!”とただ ただ叫びながら、ずっと殴られている光景を目撃しました。そのことは、決して忘れません」というものがとても印象的でした。

子供時代というのは、大事なものだと思っています。大人になると自分の子供時代を思い出したし、自分の娘の子供時代を見ていて、大きな興味を感じるんですね。僕がコメントした様に、幸せな状況でない子供を目撃したことはこの映画を作る一つのきっかけになっている。でもそれが全てでは無くて、とにかく映画が作りたかったのだけどね。

――現在メジャーレーベルからインデペンデンス映画まで、「親から子供への過干渉」というテーマが描かれることが多く、30年以上前に作られた本作はその先駆けであるとも感じました。

「ヘリコプターペアレント(※)」という言葉がありますが、昔はそういった言い方をしなかったんですよね。今だと、大人になってから「子供時代に自分の親がしていたことってこうだったんじゃないか」と考えることが多いですよね。でも僕は、僕が子供時代に親がやらせてくれていたことって、今の時代でいえば危ないことだったのかもしれない。今だったらネグレクトと呼ばれてしまうことなのかもしれないけれど、自分にとっては自由に探検する時間をもらったという感覚なんだ。50年前と比べると安全面などから、子供が子供らしく生きることが難しい部分もあると思うんだけどね。

※ヘリコプターペアレント:子ども自身のことや、その経験、問題に対し、過剰なまでの注意を払う親を指す。

――前半の鬱屈したヘビーな描写から後半への驚きの展開、最後には爽快さを感じるシーンもありました。

バビーが閉じ込められている時間をギリギリまで長くすることにこだわったんだ。だからこそ外の世界に出た時の“fantastic”さが際立つ。映画を観てくれた方の中には、最初の1/3(=閉じ込められている箇所)だけが好きという方もいらっしゃるんです(笑)。観る方におまかせしているので感想はどちらでもいいんですが、閉じ込められているシーンは、本当に耐えられなるギリギリまで長くして。これは映画だからこそ出来ることなんですよね。テレビだったら「暗いな」と切ってしまうかもしれないけれど、映画だと集中して観ることが出来るからね。

――映像面での工夫などはどんなことにこだわりましたか?

この映画でやってみたかったのが、閉じ込められている時と、外に出てからの時間の、画角を変えることだったんです。でも編集している時に、閉じ込められているシーンを狭い画角で作っているとあまりにも気が滅入る感じだったので、このアイデアは放棄してしまったんだけどね。

――バビーがキュートで唯一無二の魅力を放っていますが、このキャラクターをどの様に設計していきましたか?

僕はそもそもキャラクターを“作る”というプロセスは行わないんですね。そういうことを自分に許していません。キャラクター作りをしてしまうと、計算の様なものが出てきてしまう。書いている時は自分の中から滲み出てくるものを自然に書き留める感じなんです。今書いているものが正しいなと思ったら採用するし、違うなと思ったら使わない。脚本よりも大事なものがキャスティング。映画で見るのは、俳優さんが演じているキャラクターですから、脚本と俳優さんの力があって完成するものだと思う。そういう意味では非常にラッキーでした。ニコラス・ホープさんによって素晴らしいバビーが出来上がったのだと。

――様々な“愛”を感じる作品ですが、監督が最近感じた愛にまつわるエピソードを教えてください。

難しい質問をどうもありがとう!(笑)。僕は今南タスマニアという素晴らしい場所に、世界の誰よりも愛している女性と暮らしています。毎日顔を合わせて「僕らは本当についているよね」と言わない日は無いんです。真の愛を見つけるのに時間はかかってしまったけれど、こうして出会うことが出来て、もう20年も一緒なんだよ。

――なんと素晴らしいお話でしょうか!今日は貴重なお時間をありがとうございました。

『悪い子バビー』公開中

【ストーリー】「ドアの外に出れば、汚染された空気の猛毒で命を落とす。」そんな母親の教えを信じ、35年間、暗く汚い部屋に閉じ込められていたバビー。身の回りのすべてを母親が管理し、ただそれに従うだけの日々を送っていた。ある日、何の前触れもなく”父親”だと名乗る男が帰ってきたことをきっかけにバビーの人生は動き出す。言葉、音楽、暴力、宗教、美味しいピザ……刺激に満ち溢れた外の世界に、純粋無垢なバビーが大暴走!行く先々で出会う誰もが彼の自由で荒々しいスタイルに巻き込まれていく。

(C)1993 [AFFC/Bubby Productions/Fandango]

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藤本エリ

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

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